高校 理科 生物 【それってホントに『3:1』!?】
〜メンデル遺伝(比率)への定量的なアプローチ〜
Nigawagakuin High School
Fumitake Toyokuni(豊國 史健)
シンキングツール(Thinking Tool; TT)を用いた授業例
➡︎この授業では,TTを用いて「概念を構造化する」➡︎「身につけた知識・技能を『活用』する」を目指す
https://gyazo.com/40ca7d102cec0f4a065a7a2bfed1a4f1
授業の流れ
第1時 問題提起 「エンドウの種子の比率 丸:しわ=3:1 ってホントにそう言える?」 ➡︎ 思考の発散
第2時&第3時 「比率」を定量的に分析するためにはどうするかを考える(統計学の知識・技能の習得) ➡︎ 思考の収束
第4時&第5時 身の回りの「比率」を自分で分析してみる ➡︎ 身につけた知識・技能を『活用』する。
授業の目標(単元目標)
1 「メンデル遺伝の法則の『 3 : 1 』が妥当といえるか」を定量的に分析して判断できる(統計分析概念の構造化ができる)
2 身のまわりにあふれる様々な「比率」に関して、それが論理的に妥当であるといえるのかを判断できる汎用的なスキルを身につける(身につけた知識・技能が『活用』できる)
授業(単元)詳細は以下の通り
https://gyazo.com/e75500fcf3428f4cd9cd47cb42e67d3e
第1時:遺伝事象を考察する_その1(問題提起)
「エンドウの種子の比率 丸:しわ=3:1 ってホントにそう言える?」
実際に実験をすると 丸(705個):しわ(225個)=3.15:1 などとなる。これってホントに3:1なのか?
(教科書などでは,漠然と「3:1」ということにされているが,それってホントなのか?という視点で考える。世の中のことってそんなにキレイに割り切れるのか??)
https://gyazo.com/3312c89e5b702e6933bd718708dd2da2
3:1といえるかどうか,TT(ピラミッドチャート(上から下))を用いて意見を出す。
https://gyazo.com/4e77f3d1075b56ff7a45af90b418345e いろいろな意見を出すことで,思考の発散 を促す。
第2時:「期待度数」って何だ??(思考の収束)
第1時で発散した思考を収束させていく。
➡︎ やや専門的な統計学の話になっていく(高校レベルをやや超える。しかし,TTを用いてじっくり考えることができれば,高校生でも十分理解できると考えられる)
➡︎ 以下のTTを用いて考える。エンドウの種子の実測値(Aのア〜ウ)と理論値(完全に3:1と仮定したときの値。これを「期待度数」という)(Bのア〜ウ)を比較する。
➡︎ AとBの差をどのようにすれば適切に評価できるかを考える。最終的に「Cのウ」に入る値をどうすればよいか考える。
https://gyazo.com/3e2ff08443817a344b93efed01189c95
https://gyazo.com/024dcbc174a4b11c650515a296d7e7e3 ヒントも適宜活用する。
第3時:遺伝事象を考察する_その2(χ2検定による分析)
引き続き,思考を収束させていく。本時のさいごに第1時の問題提起に対する解答を示す。
https://gyazo.com/01215a877253b87a77d655c09b3f281b
➡︎本時はやや天下り的な統計学の説明が多くなるが,あくまで,生徒が実際に分析するのに必要な知識のみをコンパクトに伝えるのみとし,専門的な説明は最小限に止める。
https://gyazo.com/d444864aec002c0f0106e8d3d9c68fb2
➡︎「前時で求めた値(ここでは χ2値 とよぶ)」とは,第2時のTT「Cのウ」の値。この値が示すものは何か再度考える。
➡︎次に,「比率」を統計学的に分析する(=観察された比率が論理的に想定されるものと比べて妥当なものといえるかどうか)ときに用いられる手法である「χ2検定(適合度の検定)」について最低限の説明だけを行う。
「χ2検定」では「基準の値」を設定する。
「基準の値」は「自由度d.f.」と「有意水準α」によって決まる。
「自由度d.f.」はm−1で求まる。mは比率の対象の数(今回は「丸」と「しわ」なのでm=2)。したがって,d.f.=2−1=1
「有意水準α」は 確率論的にその事象が起こる確率。「α=0.05で有意差あり」とは「その事象が偶然起こる確率は5%しかない。なのにそれが起こっている。すなわち,それは偶然ではなく,本質的に差があるからだ」と考える。
https://gyazo.com/fbbe99555f4e16609b655fc55b973a47
➡︎「基準の値」はm=1,α=0.05のとき,上の表1より3.84。この値と今回得られたχ2値=0.3665を以下のTTで比べ,第1時の問いに関する答えを出す。
https://gyazo.com/100ebc3c0d4ab28b3214bf4878ca1474
第4時:身のまわりの「比率」を分析してみよう_その1
身のまわりの事がらから「比率」を探し,理論値と実測値の差を分析する準備を行う。結果の予想もしておく
https://gyazo.com/55dbbe3b7c8ca45f63ace7c47a982b0b https://gyazo.com/2f405ab42fc24ba00024812a4e19c5a1
第5時:身のまわりの「比率」を分析してみよう_その2
TTを用いて各自計算する(有意水準はα=0.05に固定)。自由度,基準の値,χ2値を計算ミスに気をつけて算出する。
計算の結果から,自信をもって結論を示す。
https://gyazo.com/888629fc9a7fc127ad100f36e9cc6b7f
➡︎生徒の様子に応じて, 統計ソフトR を用いた分析方法を紹介するとさらに学習意欲が刺激されるかもしれない。
https://gyazo.com/6bbca27786afdd973919c7fcb79430aa
参考Link
χ2検定(適合度の検定)について
統計ソフトRとχ2検定(適合度の検定)